Steam配信のゲームを漁っていると、どうしてこれが低評価なんだ!? と感じてしまうことが多々あります。
本稿で取り扱っていく中古車シム『Car Dealer Simulator』についてもそれは同様で、プレイフィールとしてはたしかに満点とはいかないまでも、もっと高評価されるべき作品ではないかと筆者は思います。
2025年5月30日にリリースされた本作は、「安く仕入れた中古車を、なるべく手をかけずにレストアして、高値で売りさばいていく」というのが基本的な流れです。25年5月31日の時点で、Steamでの総評価は「やや好評」。しかし個人的には意外と楽しい、というか期待値を大きく上回るプレイフィールでしたね。
店にやって来たお客さんに対して、誠実なビジネスを心がけるのではなく、いかに誤魔化してアレな中古車を売りつけるのかが攻略のキモというのはなかなか尖っていましょう。この「誤魔化し」という要素が、本作において強烈なインパクトを発揮していると思います。
翻訳は“わかっている人間”がやっている……?

中古車選び……これはまさに信頼と「目」の世界です。中古車である以上、車体のどこかにダメージが必ずあります。それが今後の走行に支障のない擦り傷程度のものなのか、それとも致命傷になり得る深い傷なのか、そうであったとしてもその部分をちゃんと修理したかどうか——。
残念ながら、都合の悪いことを誤魔化した状態で車を売ろうとする業者は現実に存在します。血銭をはたいて買う客を踏みにじるまったく度し難い話であります。しかし『Car Dealer Simulator』は、そんな悪質な中古車業者に自分がなっちまうこともできます。 ゲームだからこそ許されるアウトロー路線(?)を、安全に突き抜けてまいりましょう。

「よう、若いの! 俺だ、サムだ。もう会社に向かってるな? ぐずぐずするな。客が待ってるぞ! ちゃんと着いたら知らせてくれよ」
そんなわけでプレイヤーは、カウボーイハットを被ったリトル・サムというオッサンの指導で中古車販売店を開業するのですが、さっそくそこへ届くのが上記の台詞。
本作は日本語に対応した作品ですが、巷に溢れる「日本語対応といいつつ、実際はただの機械翻訳突っ込んだだけ」という感じではなさそうです。少なくとも機械翻訳だけでは、「若者」を「若いの」という形で崩した単語は出てこないでしょう。またエキゾーストマニホールドを「エキマニ」と略すなど、わかってる人でないと普通は出てこない単語が使われています。

ゲームが進行するにつれリトル・サムの言葉遣いが若干不自然な敬語になっていきますが……好意的に解釈すれば、これはもしかしたら「人間の翻訳担当による作業進行中」ということなのでしょうか……?まあ仮にこのままであったとしても、他の中古車シムには、オートブレーキシステムの「ABS」を「腹筋」と訳すような珍プレーもあるなかで、本作の翻訳レベルは十分なクオリティだと思います。
修理作業がとっても楽しい

冒頭でも少し触れましたが。本作の基本的な流れは、まずピックアップトラックにトレーラードリーをつないで車を売りたい人のところへ向かいます。交渉が上手くいって購入に至ったら、その車をトレーラーにつないで店に輸送。そこから車の洗浄、修理、ネットでの情報掲載といった流れを経て、新たなお客さんを店に呼んで売却交渉……というものです。
そんな中で、特に修理作業が本当に面白い!車体にたっぷり泡をつけて水で洗い流すと作業前よりも綺麗でピカピカの車が登場……するのですが、同時に車体あちこちに浮かんだ赤錆が目立つように。まずはこの錆を取り除いていかなくてはなりません。

サンドペーパーで錆びている部分を磨き、赤錆を周囲の塗装ごとこそぎ落とします。しかしこれは車体の表面ごと削っているわけですから、作業後はどうしても傷・凹みが生じてしまいます。そこをパテで埋めていく必要があります。

すると、今度はパテの盛り上がりをどうにかしないといけません。そこで使うのが、先ほどよりも番数の大きな(つまり目の細かい)サンドペーパー。これを繰り返して表面を平らにしたのち、最後に仕上げとして缶スプレーで塗装します。うん、これは自分でもできそうだ!
破損エキパイは交換じゃなくて補修テープで!

本作では、こうした外観の修理だけでなく内部部品の修理もできます。内部をモニタリングする画面に切り替わると、「どこに問題があるのか」ということが赤色のハイライトで分かりやすく表示されます。
上記画像の場合、どうやら触媒コンバータとその周囲のエキゾーストパイプに損傷があるようです。スプレーを吹き付けると、具体的な損傷個所が判明します。そんなところへ聞こえてくる我が師匠の声。
リトル・サム「そこに補修テープを貼るんだ、兄弟!」
うん、分かったよおじさん……って、ほ、補修テープ!? 『名車再生 クラシックカーディーラーズ』のエド・チャイナみたいに、溶接で穴を塞ぐとかじゃなくって!?!?!?

もちろん、エキパイを触媒コンバータごと新品に交換することもできますが、それでは費用がかかっちまいます。こちとら商売はじめたばかりのヒヨッコ中古車ディーラーですぜ。
費用を少しでも浮かせるため、コンビニで売られてるような黒いビニールテープを貼れば、より安上がりで済むわけです。アッハッハッハッ、なかなかいいアイディアだぜ兄弟!(現実では絶対に真似しないでください)
「清掃が行き届いている中古車販売店」を選べ!

話は全く関係ないのですが、実は筆者、ほんの2週間ほど前に中古車を購入しました。ダイハツの初代コペンです。筆者が購入した時点で既に13万km走っている20年落ちの車ですが、エンジンの状態は極めて良好! 低年式の初代コペンにありがちと言われている「リアフェンダーの錆」は、全くありませんでした。
その上、前のオーナーはどうやらマメな人だったらしく、5,000km毎にオイルを交換したことを示す記録シールが車内のあちこちに貼られていました。これが購入の決め手になったわけです!ちなみにこれは、中古車情報サイトには掲載し切れない要素でもあります。

ゲームの『Car Dealer Simulator』に話を戻します。ひと通り修理が終わったら、タブレットのカメラで車の写真を撮影して、それを中古車情報サイトに掲載。

それを見たお客さんが早速来店してきたのですが……恐ろしいことに実車の外見をちょっと見ただけで「これに決めた!」と言い出してしまいます。良いんですか、その車には間に合わせの補修テープが巻き付けられているんですよ?これは決して笑い事ではなく、実際にそういう人がたくさんいるからこそ現実のネットオークションでも中古車の売買が行われている部分もあります。
クーリングオフ制度の対象外である中古車は、それ故に「販売店の信頼度」が重要です。筆者の知り合いが「信頼できる中古車販売店は、例外なく店内の清掃が行き届いている」と言っていました。では、『Car Dealer Simulator』のプレイヤーの店はどうかというと……。

うひぃ、汚ぇ!!!!! 休憩室がこんなんだから、トイレはもっと悲惨なのですが……あまりに汚な過ぎて、記事に掲載できません!!! ゲロゲロゲロゲロゲロ!!!!!

なにはともあれ読者の皆さまのなかに現在、中古車購入を検討されている方がいらっしゃれば、まず本作をプレイすることをおすすめします。「中古車販売店選びのイロハ」を学び、舞台裏を知ることで賢く買い物をしていくのはいかがでしょうか。
そんな世の中の酸いも甘いも噛み分けることができる(?)中古車販売シム『Car Dealer Simulator』は、2025年5月30日よりSteamにてWindows PC向けに配信中です。